三本の道

三本の道

新興住宅街の碁盤の目のような町内を抜けると 三本の道がある。
真ん中にあるこの道は仕事に行くときに通る道。
秋田駅や官公庁など秋田市内の心臓部。仕事のほとんどはこの道を通り務める。

家を背にして右側の道は 少し小高い丘となりイオンモール秋田を中心として郊外型商店が集まっている。
この道を一時間ほど走ると角館に着く。雪のない時期はドライブに出かけたりもする道だ。
この道は左右に夾竹桃が植えられており 夏にはピンク色の可愛い花々が目を楽しませてくれる。

そして道の途中からは 街路樹が欅並木にと変わり 大きな枝いっぱいの緑が 命の歌を謳歌して その溢れる生命力を目と心に届けてくれる。

三本目の左側の道は 行く回数の割にはちっとも痩せないけれど県立プールと友人たちとのランチの時に通る道。この道の街路樹は ナナカマド。

木が硬くて燃えにくいため 七回も釜戸にくべてやっと燃えるところから ナナカマドと言うと母が教えてくれたことがあった。

秋には真っ赤なキラキラした実をたわわにつけ 紅葉した葉の色と共に秋の訪れを伝えながら 誰人《だれびと》も持っている詩心を思い出させてくれる。

今の時期は鋸状の葉を緑に整え 白く小さな花が密集して逆三角形の花束のように 枝元を飾っている。
葉の緑と花の白のコントラストが初々しい花嫁のブーケのようだ。

秋に実を結ぶための準備が誰が教えるわけでもないのに きちんと取りかかられており ラストスパートに強いのなどと横着なことを口にするわが身を恥じるばかりだ。

巡り来る季節を学習し知恵と営々と続く勤勉さで 自分の務めを着々とこなす自然の営み。

このナナカマドの道を一時間半ほど進めば男鹿半島につながる。
子供たちが小さい頃は良く行ったものだった。

嬉しいこと 苦しいこと 悲しいこと 頑張ったこと さまざまな時間を重ねる 私の日常坐臥を共に重ねてくれた三本の道。

あとどれくらい車を運転できるのか あとどれくらい自分の足で歩けるのか 先は解らないけれど どこに行くにも帰るにも この三本の道を通って過ごした日々を 感謝の心で大切に包んで旅立ってゆけるグランマでありたいと思っている。《僧侶であった一休さんの最後の言葉が「まだ死にとうない」なのだから凡人の私は尚更思いとは遠い形になることもあるのだろうけれど》

ブログを打つ手を休めて窓越しに空を眺めると 輪郭線もほんわりと優しげなお月さまがのぞいている。
柔らかな光と共に見守っていてくれたお月さまと目があったような気がした。
はっきりとしない優しさも有難いよねと独り言。

***照りもせず曇りも果てぬ春の夜の 朧月夜「おぼろづくよ」にしくものぞなき***
《さわやかにすがすがしく照り渡るでもなく だからと言って 曇りきって見えないのでもなく 春の夜の朧月夜ほど味わい深いものは無いよねぇ》

春の宵には必ず何度か口を衝いて出る 覚えやすく口ずさみ易い歌で 好きな一首である。


行くにも 帰るにも通る三本の道。
この道を通って 今日も仕事に出かけ この道を通って 無事に家路に着くことができた。有難いことだ。
そして春の宵のお月さまの優しさのシャワーを浴びてから 眠りのとこに着くことができることも有難い。
沢山の有り難さを頂きながら 今日のひとひを終えることにも感謝。

生きる長さを決めるのは神様。でも道幅と深さは自分が決める。自分の自由。自分が設計者。
感謝の心で命を清めながら 三本の道を行きつ戻りつ 日々を精一杯努めてゆきたいと希「ねがって」いる。


最後までお読み下さって本当に有難うございます。
毎週火曜日に更新しています。次回は五月三十一日です。どうぞご覧くださいませ。

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Secre

No title

三本の道 それぞれに色々な思い出があるのですね^^

人生を重ねていって 後で素敵な思い出になるように

ひび努力しなくてはと思います。

札幌まだまだ寒いです。

どうぞ 葉ISさんも

天候の変化 気温の変化 ご体調お気を付けくださいね!!

No title

こんばんは~
3本の道が、人生の道のりを語るようですね。
その視点が面白いと思いました。

ナナカマドの名称の由来は、そういうことだったんですね!
私は色々知らないことばかりで、おかげさまで、
感動に満ちた毎日です。

自然の営みには、私も感心しきりで、時期になれば
おなじみの植物たちが、ちゃんと姿を現して、
人間に季節の到来を告げてくれます。
どんな事が起きていていようも、同じように、
その姿をみせてくれる。。。。
私も生かされてるんだなぁ~と感じます。

おぼろ月は、言の葉さんのお気に入りなんですね。
「記憶がおぼろ月夜・・・」のくだりを思い出しました。
ほのぼのとした、おかしみと優しさがある言葉ですよね。

No title

相馬先生、こんばんは。

 ナナカマドですか…「ナナカマド」という和名は、"大変燃えにくく、7度竃(かまど)に入れても燃えない"ということから付けられたという説は、広く流布してます。

 その他に、"7度焼くと良質の炭になる"という説や、食器にすると丈夫で壊れにくい事から"竃が7度駄目になるくらいの期間使用できる"という説などもあったと思います。

 三本の道も、視点が面白くて良いですね。「生きる長さを決めるのは神様。でも道幅と深さは自分が決める。自分の自由。自分が設計者」素敵です。自分も努力しなければなぁ、と思います。


・・・朧月夜に似るものぞなき

こんにちは。

源氏物語のなかで朧月夜が口ずさんだ歌です。
大江千里の歌と下の句が違っているので
読み替えたとか新古今集に別の写本があったのではと言われていますが・・・。
この歌によってかの姫君は「朧月夜」の愛称が付きました。
源氏と敵対する右大臣の娘。この関係によって源氏は都を離れ須磨明石に。
ゆくゆくは女御にと考えられていた朧月夜。
源氏と出会った後も少しも悪びれることなく宮中に尚侍として出仕し有能に仕事をこなします。
今に通用するような独立心を持った才色兼備のひとです。
あのもっさりとした十二単を纏っていた時代によくこういった女性を造形できたと感心しています。

(源氏物語は語りだしたらキリがないですね~)

紫式部と同じように中宮彰子に仕えた和泉式部が詠んだ歌
「暗きより暗き道にぞ入りぬべき はるかに照らせ山の端の月」
が結構好きです。暗いんですが…。ちょっと仏教的です。

同じ「暗い」つながりで…
「人生の半ば過ぎ私は暗い森の中にいた」
原語は「Nel mezzo del cammin di nostra vita, mi ritrovai per una selva oscura 」
かの有名なダンテ《神曲》のはじまりの一節です。
この一文読みたさに《La Divina Commedia》(伊語・神曲)を買いました。
英語との対訳になってる優れものです。
西洋語は日本語と構造が違うので、日本語だとぜんぜん“対”にならないんです。
多分伊語自体もやさしい現代語に直してある気がします。

と、相変わらずの、とりとめない長文・・・悪文の範ちゅうに入りそうです。
迷ってるなァ~~


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No title

三本の道、情景を思い浮かべながら読ませて頂きました。

日々の当たり前の生活の中で、「感謝」という言葉を忘れがちです。
改めて「感謝」の大切さを感じさせていただきました。

No title

こんにちは♪

ななかまど。赤い実が印象的ですが、お花の咲いているところをじっくりみた記憶がないです。
そろそろ北海道でも花咲く頃でしょうか。
散歩道にある並木を見上げてみたいな。と思います。

No title

美しい文章ですね。。

自分は一生かかっても書けません(*_*;


三本の道の情景がよく思い浮かんできます。。

男鹿も角館もとてもステキな場所ですよね。。。


ぽち☆~^^

No title

先日はご丁寧なメールありがとうございました。

いつも、読み逃げですいません。

心温まる文章、いつも楽しみに読ませて
いただいてます。
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言の葉IS

Author:言の葉IS
みちのく秋田在住。
座右の銘{往く言葉が美しければ 還る言葉も美しい}
日常の小さな出来事を綴ります。

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