夏椿

祖母の教えてくれた花


夏椿が咲いた。
白い花弁だが 西洋紙のような白ではなく和紙のような柔らかな色味と嫋やかな張り感がある。
黄緑色に茂った葉に守られながら浮かぶように咲いている。
この花に出会うと 陸奥にも初夏が訪れたことを実感する。
ずっと見入っていたいと思う好きな花だが 一日花。


父方の祖母の家にもこの木があった。
花の咲く時期に行ったことは無いので見たことはなかったが 祖母はこの花が好きで 咲くと嬉しくてしょっちゅう仕事の合間にこの花を見るのだと言っていた。

東京から列車やバスを乗り継いで 夏休みには毎年祖母の家に行った。
昔のバスのキツイ匂い・・・でこぼこの田舎の白い道と砂埃・・・門柱横の大きな桐の木・・・。
家の前で止まってくれるバスから飛び降りて 祖母の名を呼びながら走って駆け込んだ台所のたたきのひんやりとした感触がズックを通して伝わってきた。


祖母といとこ達と過ごす楽しい夏休みの始まりだ。

大人達は日頃祖母一人では手の回らない無駄なほど大きい田舎の家のここかしこを磨き上げたり 庭木を剪定したり 私たち孫は祖母の傍でいろいろな話をしたり 聞いたり 通知表を見せたり 祖母と歩いて摘んだ花で押し花を作ったり 池の泥さらいをしながら大きな鯉を抱えて仮池に運んだり 思い切り泥んこになったり きれいに水替えされた池で鯉と一緒に泳いだり 朝から晩まで祖母といられる時間を堪能した。

大きな火鉢を押し花作りの重しにして 毎日新聞紙を取り換えた黒光りした板の間のこと いとこ達とぴったりくっつけて布団を敷き終わると 祖母が蚊帳を吊っててくれて昼間見つけた蛍を放して その光を目で追いながら祖母にお話をせがみ眠りについたこと・・・・さまざまが思い起こされる。


蛍の青白い瞬きを見ながら祖母がしてくれた昔話の中に平家物語があり 那須与一や扇の的を知った。
その逆に 弁慶と牛若丸など源氏の話もあった。そして源氏蛍と平家蛍があることも知った。


その数日後の昼間 縁側でおやつのスイカを皆で食べている時に 男の子たちが種飛ばし競争を始めた。
ワイワイ騒ぎながら女の子たちも全員が真似をした。
東京のマッチ箱のような家ではできないことをしても 祖母は叱ることもなく目を細めて見ていた。


一番遠くまで飛ばしたいとこが自慢して 種の飛んだ地面に丸を書きにいった。
そして戻って来た時に 種の傍のあの木はなんという木なのと聞いた。
その時に祖母が 平家物語の冒頭の句を口ずさみながら教えてくれたのが 夏椿(沙羅双樹)だった。


夏椿の花を見るたびに 毎年蘇る祖母との思い出の一こま一こま。
自分の孫たちは祖母の記憶を留めることはあるのだろうかと思いつつ 今朝も咲いた白い花弁に見入っている。

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蕾と共に♡~  花のアップ    球形の蕾と葉  一輪だけ玄関に飾りました
サムネイルです。クリックすると大きな花をご覧になれます(*^_^*)



拙い独り言のような記事を最後までご覧くださって有難うございます。
(言の葉ISの絵のない絵本)は毎週火曜日に更新しています。
次回は七月九日を予定しています。どうぞご覧下さいませ。



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Author:言の葉IS
みちのく秋田在住。
座右の銘{往く言葉が美しければ 還る言葉も美しい}
日常の小さな出来事を綴ります。

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